エンジニアなら知っておきたいアルミダイカスト技術の基本(1)
ダイカストとは、「アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などの溶融金属を緻密な金型の中に圧入して、高精度で鋳肌の優れた鋳物を短時間にハイサイクルに生産する鋳造方式である」と定義されています。なかなか分かりにくいですね。笑 しかし、ダイカストは他の鋳造方法に比べて優れている所が多く、特に自動車関連部品などで多く使用されています。ということで、本章ではそのダイカスト技術に注目し、その後アルミニウム合金におけるダイカスト技術の説明・特徴を記述していきます!
0.目次
2.ダイカストの特徴
(1)寸法精度
(2)鋳肌
(3)肉厚
(4)強さ
(5)設計の自由度
(6)鋳込金具
(7)切削加工費の削減
1.ダイカストとは?
まず、ダイカストを簡単に言うと「溶かした合金を圧力をかけて鋳型に流し込んで鋳造する方法」です。金型(Die)による鋳物(Cast)の意味で、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム、合金、銅合金などの溶融金属を、きわめて短時間に緻密な金型の中に射出・充填して、高圧力を掛けて凝固させるため、高精度な薄肉鋳物がハイサイクルで生産できる、ということです。溶融金属とは、溶かして液体帯状態にした金属や合金のことで、鋳造では溶湯(ようとう)といいます。また、この方法によって得られる製品自体もダイカストと言われます。
下記の写真1はアルミ合金ダイカストの一例です。このような形は金型に溶湯を流し込んで製造していきます。
写真1 ダイカストの例
2.ダイカストの特徴
合金によって用途は異なりますが、ダイカストは高い精度の鋳物を短時間で大量生産できるため、自動車関連を中心にOA機器、家電用品、建築用品などの構造部品、機能部品として広く使用されています。ダイカストの特徴は以下の通りです。
(1)寸法精度
ダイカスト製品は、高い寸法精度を有します。その寸法精度は、アルミニウム合金ではJIS B 0403:1995の鋳造品の寸法公差のCT5~7に等級に相当し、砂型鋳造(CT9~12)、金型鋳造(CT6~8)に比較して寸法精度が高く、精密鋳造のCT4~6に近い。また、亜鉛金属ではCT4~6で、アルミニウム合金の寸法精度より高いです。つまり、ダイキャストは寸法精度が比較的高いということです。
(2)鋳肌
ダイカストは、溶融金属を金型キャビティに充填した後に高い圧力をかけるため、美麗で平滑な鋳肌が得られます。鋳肌とは、鋳造したままのダイカスト製品の表面を言います。金型鋳造や低圧鋳造のような他の鋳造では、塗型(表面を溶湯の熱から保護して、鋳肌を改善したり、焼付きを防止したりする目的で鋳型表面にセラミックの粉などを塗ること)が必要です。
また、金型キャビティ充填後に30 ~ 70MPaの高い圧力がかけられるために鋳肌が美麗かつ平滑です。一般的にダイカストの表面粗さは12S以下にすることが出来、砂型鋳物は40~100S、金型鋳物の10~80Sにくらべて小さくなります。
(3)肉厚
ダイカストの肉厚は、砂型鋳物や金型鋳物に比べてその肉厚を薄くすることができます。具体的には、小物ダイカストで0.8~3.0mm、大物ダイカストで2.0~6.0mmです。ただし、7mm以上になると鋳巣などの内部欠陥が多くなり好ましくありません。
(4)強さ
ダイカストは、砂型鋳造や金型鋳造に比べて強度が高いです。というのは、他の鋳造に比べて冷却速度が大きいため、鋳造組織はそれらに比べて微細です。
(5)設計の自由度
ダイカストは鋳抜きが容易で、寸法精度、鋳肌面精度が優れているため、最終形状に近い鋳物が大量に生産でき、鋳物としての設計自由度が高いです。しかし、鋳型は金属で構成されるため、アンダーカットのある鋳物には不向きです。特に、中空形状のある製品のダイカストは不可能です。
(6)鋳込金具
ダイカストは、他の金属材料(鋳込金属)を鋳型に入れ、本体の正確な位置に接着する鋳包みができます。この鋳込金具を利用することにより、ダイカスト合金では得られない硬さ、強さ、耐摩擦性などが容易に得られます。
(7)切削加工費の削減
ダイカストは、ニアネットシェイプ化が可能です。ニアネットシェイプ化とは、材料を最終形状にするための仕上げ作業をほとんど使用しないことを言います。これにより、面削、バフ加工、機械加工などを減少させることが出来ます。また、寸法精度がよく、製品間でのばらつきが少なくできるため、ローコスト対応できます。
まとめ
ダイカストの定義は、「アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金などの溶融金属を緻密な金型の中に圧入して、高精度で鋳肌の優れた鋳物を短時間にハイサイクルに生産する鋳造方式である」でした。上記の内容を踏まえて、改めて読み返してみると理解できるのではないでしょうか。ダイカストのポイントは、高精度で鋳肌が優れた鋳物、短時間で高いサイクルで生産できる、です。
今回は、ダイカストの説明と特徴でしたが、次は合金材質とその特徴及び用途について記述してきます。引き続き目を通していただけますと幸いです!
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参考文献
- 『絵とき ダイカスト基礎のきそ』(日刊工業新聞社 2015年版)
- 『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい鋳造の本』(日刊工業新聞社 2015年版)
- 『鋳造技術シリーズ 6 軽合金鋳物・ダイカストの生産技術』(一般座談法人 素形材センター2014年版)
- 小冊子『ダイカストって何?』(一般社団法人 日本ダイカスト協会)
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