エンジニアなら知っておきたいアルミダイカスト技術の基本(2)
前回まで、ダイカストの説明・特徴について記述しました。そこで1つ気になるのが、そもそも合金の溶解てどうするの? 今回はダイカストをより深く理解するために、合金の溶解について理解していきましょう。
1.合金の種類
そもそも、ダイカストで使われる合金は何なのでしょうか。現在使用されているダイカスト合金には、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金の他にわずかではありますが、銅合金、錫合金、鉛合金が使用されます。
主な合金の種類 |
アルミ合金,亜鉛合金,マグネシウム合金 |
その他 |
銅合金,錫合金,鉛合金 |
2.合金の溶解
まず、合金を溶解するには融点を超えることが大事です。アルミニウム合金の融点は比較的低いので、簡単に溶解することは出来ます。実際には、健全な鋳物を作るには品質の高い溶解金属が必要で、実生産においては鋳造量に対応できる溶解量、生産品のコストに見合う費用等の点を考慮していかなければなりません。ですが、合金を溶解するためにはいかに効率よく融点を超えるかです。
溶融金属とは、溶かして液体状態にした金属や合金のことで、鋳造では溶湯(ようとう)といいます。その溶融金属をダイカストマシンに供給するために、鋳造合金を溶解する必要があります。溶解する材料には、インゴット、返り材、切り材、スクラップなどがあります。インゴットには新塊と再生塊がありますが、約9割が再生塊です。返り材は、ランナーやオーバーフローなどの製品以外の部分です。切粉はダイカストの後加工で出たもので、切削油などの接着物を十分に除去して溶解します。溶解金属品質を保持するため、返り材などの配合量は通常60%以内にします。また、溶解炉に原材料を投入する際には水蒸気爆発を防ぐため、十分に予熱・乾燥する必要があります。
写真1 合金の溶解
2-1.集中溶解方式
集中溶解方式には、急速溶解炉、るつぼ炉、反射炉などがあります。この場合には、ダイカストマシンに供給する溶融金属を保持する保持炉がダイカストマシンに近接して設置されます。保持炉には、るつぼ炉、反射炉、浸漬ヒータ型保持炉などがあります。
2-2.個別溶解方式
個別溶解方式に用いられる溶解兼保持炉は、溶解室、保持室、汲み出し室を備えています。溶解兼保持炉とは、ダイカストマシンに隣接した炉に溶解機能と保持機能を持たせたものをいいます。これらを使用する熱源には、重油、ガス、電気などが用いられます。
3.溶解の注意点
溶解にあたっては、溶融金属温度、溶融金属品質に注意する必要があります。溶解温度はアルミニウム合金の場合、670~760℃程度、亜鉛金属の場合420~450℃、マグネシウム金属の場合650~700℃が一般的です。マグネシウム合金は、活性で燃焼しやすいSF6などの防燃ガス雰囲気で溶解保持する必要があります。ただし、SF6は温室効果ガスのため、代替ガスへの転換が行われつつあります。
まとめ
ダイカストを行うためには、合金を溶解する必要があります。そのためには、
鋳造合金を溶解する必要があります。そして、合金の溶解には集中溶解方式と個別溶解方式(溶解兼保持炉)があり、溶融金属温度、溶融金属品質などの注意する必要があります。以上が合金の溶解における内容でした!
次回は実際にアルミニウム合金に焦点を置き、アルミニウム合金ダイカストにおける特徴や用途については記載していきたいと思います!
関連ページ
参考文献
- 『絵とき ダイカスト基礎のきそ』(日刊工業新聞社 2015年版)
- 『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい鋳造の本』(日刊工業新聞社 2015年版)
- 『鋳造技術シリーズ 6 軽合金鋳物・ダイカストの生産技術』(一般座談法人 素形材センター2014年版)
- 小冊子『ダイカストって何?』(一般社団法人 日本ダイカスト協会)
アルミ鋳物・ダイカストに関する
課題を解決します
溶融品質
を上げたい製品歩留まり
を改善したい製品長寿命化
を図りたい自動化・省力化
を進めたい省エネ
を追求したい