アルミ鋳造技術の革新に貢献する技術情報サイト

運営会社:株式会社日本高熱工業社

お電話でのお問い合わせ

052-521-5411

メールでのお問い合わせ

コラム一覧

アルミ鋳物・ダイカストに関する技術コラムです

炭素税 ってなに? ~じわじわ効いてくる“環境コスト”の話~

炭素税

「 炭素税 」って、そもそも何のためにあるの?

最近よく耳にする「 炭素税 」。でも、「なんだか難しそう…」「うちの工場に関係あるの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。

簡単に言うと、炭素税は“CO₂(二酸化炭素)を出すとお金がかかる”仕組みです。目的はズバリ、地球温暖化を防ぐこと

たとえば、石炭や重油を燃やすとCO₂が出ますよね。炭素税は、その「出したCO₂の量」に応じて税金をかけることで、「CO₂を減らそう」という行動を後押しする制度なんです。

つまり、環境にやさしい会社ほど得をする、逆にたくさんCO₂を出す会社はコストが増えるという、ちょっとした“環境版のインセンティブ制度”とも言えます。

え、もうあるの?「地球温暖化対策税」との違い

実は日本にも、すでに「地球温暖化対策税」という炭素税の“やさしめバージョン”があります。これは2012年から導入されていて、ガソリンや電気などにちょっとだけ上乗せされている税金です。

でもこの税、1トンのCO₂あたり289円と、国際的に見るとかなり低め。たとえばスウェーデンでは1トンあたり1万5,000円以上の炭素税がかかっています。

つまり今の日本の制度は、「炭素税の入門編」みたいなもの。
一方で、今後議論されているのは、もっと本格的で“効く”炭素税。CO₂排出量が多い企業には、かなりのコストインパクトが出る可能性があります。

関連制度もチェック:「化石燃料賦課金」と「特定事業者負担金」

化石燃料賦課金って?

これは、再生可能エネルギーの導入を支援するために、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に課される追加コストです。対象は主に輸入事業者などで、2028年度から導入予定です 。

電力会社などが支払う形ですが、最終的には電気料金などに反映されるため、間接的に企業にも影響があります。

つまり、「CO₂を出す燃料を使うと、その分、再エネのためにお金を払う」という仕組み。これも炭素税と同じく、“環境負荷に応じたコスト負担”の一種です。

特定事業者負担金って?

こちらは、大規模なCO₂排出事業者(例:製鉄所や化学プラントなど)に対して、排出削減のための費用を一部負担してもらう制度で、2033年度から導入予定です 。

たとえば、排出枠の一部をオークション形式で販売し、その購入費用を「特定事業者負担金」として徴収します。

つまり、「たくさん出すなら、その分、削減のための“応分の負担”をしてね」という考え方。これも、将来的な炭素税の強化とセットで議論されることが多いです。

海外ではどうなってるの?導入事例とその影響

スウェーデン:世界一高い炭素税で産業が変わった

スウェーデンは1991年に炭素税を導入。今では1トンあたり100ユーロ(約1万6,000円)以上という高水準です。

その結果、再生可能エネルギーの導入が進み、製造業も省エネ設備にどんどん投資。最初は「コストが上がる」と反発もありましたが、今では環境対応が競争力の源泉になっています。

カナダ:排出効率のいい企業は優遇

カナダでは、排出量が少ない企業には税負担を軽くする「出力ベース基準(OBPS)」という仕組みがあります。これにより、効率の良い製造業は有利に、非効率な企業は改善を迫られるという構図に。

つまり、がんばってる会社が報われる”制度設計がされているんですね。

日本で本格的な炭素税が導入されたら?

さて、もし日本でも「本気の炭素税」が導入されたら、製造業にはどんな影響があるでしょうか?

  • エネルギーコストが上がる
    → 電気・ガス・燃料のコストが増える。特に重油や石炭を使っている工場は要注意。
  • 製造プロセスの見直しが必要に
    → 省エネ設備への更新、排熱回収、工程の最適化など、ムダなCO₂”を減らす工夫が求められます。
  • 設備投資の判断が変わる
    → これまで「高いから後回し」にしていた省エネ機器も、炭素税を考えると“投資した方が得”になるかもしれません。
  • 価格転嫁が難しい業界は厳しい
    → 炭素税分を製品価格に上乗せできないと、利益が圧迫されるリスクも。

会社として考えておきたいこと

炭素税は、単なる「税金」ではなく、企業のあり方そのものを変えるきっかけになるかもしれません。

  • ESG(環境・社会・ガバナンス)対応
    → 投資家や取引先は、環境対応を重視する時代。炭素税への対応は、企業価値や信用にも直結します。
  • 技術革新のチャンス
    → 省エネ技術、再エネ活用、スマートファクトリー化など、環境対応=競争力”になる時代です。
  • サプライチェーンの再構築
    → 自社だけでなく、取引先のCO₂排出も評価対象に。調達先の見直しや、共同での排出削減も視野に入ります。

最後に:うちの会社、今のうちに何を考えておくべき?

炭素税は、まだ「これから」の話かもしれません。でも、導入されてから慌てるのでは遅いのも事実。

今のうちにできることはたくさんあります:

  • 自社のCO₂排出量を「見える化」しておく
  • 省エネ・再エネの導入可能性を検討する
  • 炭素コストを含めた投資判断の基準をつくる
  • ESGやサステナビリティの視点を経営に取り入れる

「炭素税ってなんだか遠い話」と思っていた方も、じつはすぐそこまで来ている“経営課題”かもしれません。今こそ、会社としての“環境戦略”を考えるタイミングです。


↓こちらもチェック↓

コラム:日本のアルミ鋳造業界を取り巻く課題

 


 

アルミ鋳物・ダイカストに関する
課題を解決します

  • 溶融品質
    を上げたい

  • 製品歩留まり
    を改善したい

  • 製品長寿命化
    を図りたい

  • 自動化・省力化
    を進めたい

  • 省エネ
    を追求したい

そんなご相談はアルミ鋳物・ダイカスト技術ナビ
イノベーションセンターにご相談ください!
各種試験や材料段階からの検証など
幅広いアプローチで課題解決をお手伝いします。

イノベーションセンターについて