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アルミ鋳物・ダイカストに関する技術コラムです

2025.11.21

鋳造業の未来を支える補助金制度 ― 経営課題の解決と成長戦略を支援する公的支援の活用法 ―

補助金・助成金制度

鋳造業界では、労働力不足、生産性の向上、脱炭素対応といった複合的な課題が経営の重荷となっています。こうした状況下で、国の補助金・助成金制度は、単なる資金援助にとどまらず、企業の変革を後押しする「経営戦略の一環」として活用することが可能です。

当社では、鋳造業をはじめとする製造業の皆様に向けて、日々制度の調査・情報収集を行い、最適な活用方法をご提案しています。本稿では、特に注目すべき4つの補助金制度について、制度の概要から申請のポイントまでを平易に、かつ丁寧に解説いたします。

1. 省エネ・非化石転換補助金

― エネルギー効率の向上と脱炭素化を同時に支援する制度群 ―

この補助金群は、経済産業省の支援のもと、エネルギーコストの削減と脱炭素化の両立を目指す企業に対して、設備投資を促進するための制度です。以下の2つの制度に分かれており、目的や設備の特性に応じて使い分けが可能です。

(1)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

― 非化石エネルギーへの転換や構造的な省エネ・脱炭素化を支援 ―

この事業は、エネルギー価格の高騰や供給不安、そして脱炭素社会の実現に対応するため、エネルギー消費構造の転換を図る企業を支援するものです。以下の2つの事業区分に分かれています。

(Ⅰ)工場・事業場型

生産ラインの更新等を通じて、工場・事業場全体での大幅な省エネルギー・脱炭素化を図る取り組みを支援します。

  • 対象:中小企業・大企業問わず
  • 補助率:中小企業は最大1/2、大企業は最大1/3
    (※先進設備・システムを導入する場合、中小企業は最大2/3、大企業は最大1/2)
  • 補助上限:最大15億円(※先進設備・システムを導入する場合、最大20億円)
  • 申請のポイント:省エネ効果や非化石エネルギー利用率を定量的に示す必要があります。

(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型

化石燃料から電気や低炭素燃料への転換を支援する制度です。電気炉やヒートポンプなど、非化石エネルギーを活用する設備が対象となります。

  • 対象:中小企業・大企業問わず
  • 補助率:1/2以内(企業規模にかかわらず共通)
  • 補助上限:通常は最大3億円、電化は最大5億円
  • 申請のポイント:非化石エネルギーへの転換を伴うこと、CO₂排出削減効果の定量的な提示が求められます。

(2)省エネルギー投資促進支援事業(設備単位型)

― 指定設備の更新による省エネを支援 ―

この事業は、より汎用的な省エネ設備(高効率ボイラー、空調、モーター、照明など)への更新を支援する制度です。導入設備は、事前に指定されたリストに基づく必要があります。

  • 対象:中小企業・大企業問わず、製造業を含む幅広い業種
  • 補助率:1/3以内(企業規模にかかわらず共通)
  • 補助上限:最大1億円(設備単位型)
  • 申請のポイント:設備ごとの省エネ効果(削減量・削減率)を明確に記載する必要があります。

活用事例

ある鋳造工場では、老朽化したコンプレッサーと空調設備を高効率型に更新。年間電力使用量を15%削減し、補助金により導入コストの約40%を補填。省エネ法対応とランニングコスト削減を同時に実現しました。

気をつけるポイント

  • 対象設備が事前に指定されているため、導入前に必ずリストを確認すること
  • 省エネ効果の「見える化」が求められるため、エネルギーマネジメントシステム(EMS)との併用が推奨されます
  • 書類作成には専門的な知識が必要な場合があり、外部支援の活用も検討が望ましい

🔗 参考ページ:
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業(資源エネルギー庁)
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業(環境共創イニシアチブ)
省エネルギー投資促進支援事業(環境共創イニシアチブ)

2. 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業(SHIFT事業)

― 脱炭素経営を後押しする環境対応型補助金 ―

概要

環境省が主導する本事業は、工場・事業場における脱炭素化の先導モデルを創出し、CO₂排出量の大幅削減を図ることを目的としています。電化・燃料転換・熱改修等の取り組みが対象です。

 対象

  • 中小企業を含む製造業全般
  • CO₂削減計画を策定し、実行可能な設備導入を行う事業者

メリット

  • 高効率設備導入に対する補助
  • DXを活用した運用改善も対象
  • 2050年カーボンニュートラル実現に向けた支援申請のポイント
  • CO₂削減効果の定量的な算出が必要
  • 削減計画の策定と第三者評価の活用が推奨される
  • 環境対応型経営の一環として、企業価値向上にも寄与

活用事例

鋳造工場において、重油炉を電気炉に転換し、年間CO₂排出量を40%削減。SHIFT事業の補助により、導入コストの約半分を補填。環境対応型企業としての評価も向上。

気をつけるポイント

  • CO₂削減効果の「定量的な根拠」が求められるため、事前のエネルギー診断が有効
  • 設備導入だけでなく、運用改善やモニタリング体制の構築も評価対象
  • 環境省の審査基準は他制度より厳格な傾向があるため、専門家の支援を受けるのが望ましい

🔗 参考ページ:SHIFT事業(環境省)公式サイト 

3. 中小企業省力化投資補助金

― 人手不足と生産性向上に対応する省力化支援 ―

概要

本補助金は、IoT・ロボット・AI等の省力化設備を導入することで、人手不足の解消と生産性向上を図る中小企業を支援する制度です。2025年度は「一般型」として、オーダーメイド性の高い設備導入が可能です。

対象

  • 中小企業、小規模事業者
  • 鋳造業を含む製造業全般

メリット

  • 補助上限額:最大1億円(従業員数に応じて変動)
  • 補助率:最大2/3(小規模事業者等)
  • DXや自動化による業務効率化を支援

申請のポイント

  • GビズIDの取得が必須
  • 申請書には、導入設備の省力化効果や賃上げ計画の明示が求められる
  • 採択率向上には、現場課題と導入効果の定量的な記述が有効

活用事例

鋳造工場において、バリ取り工程に協働ロボットを導入。作業時間を30%削減し、熟練工の負担軽減と若手の定着に寄与。補助金により初期投資の約半分をカバー。

気をつけるポイント

  • 「省力化効果」が明確でないと採択されにくい
  • 賃上げ計画の提出が求められるため、労務コストとのバランスに注意
  • 汎用設備ではなく、業務課題に即した「目的特化型設備」の導入が望ましい

🔗 参考ページ:中小企業省力化投資補助金 公式サイト 

4. ものづくり補助金

― 革新と成長を支える中小企業の中核支援制度 ―

概要

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、中小企業が行う革新的な製品・サービス開発を支援する制度です。(※革新的な製品・サービスの開発に伴う設備投資を支援する制度であり、既存工程の単なる改善は対象外となります。)

対象

  • 中小企業・小規模事業者(個人事業主含む)
  • 製造業、サービス業、商業など幅広い業種
  • 鋳造業も対象に含まれます

メリット

  • 補助上限額:最大3,000万円(従業員規模により変動)
  • 補助率:中小企業1/2、小規模事業者2/3
  • 高付加価値化、DX化、海外展開なども支援対象

申請のポイント

  • GビズIDプライムアカウントの取得が必須
  • 事業計画書には、5年間の付加価値額・給与支給総額の目標設定が必要
  • 革新性・収益性・実現可能性の3点が審査の要

活用事例

ある鋳造企業では、3DスキャナとCAD/CAM連携による鋳型設計の自動化に取り組み、試作期間を40%短縮。補助金により約1,800万円の設備投資を実現し、受注拡大と若手技術者の定着に成功しました。

気をつけるポイント

  • 「革新性」が求められるため、単なる設備更新では採択されにくい
  • 事業計画の実現可能性を裏付けるデータや根拠が必要
  • 採択後の報告義務(事業実施報告・実績報告等)も見据えた体制づくりが重要

🔗 参考ページ:ものづくり補助金 公式ポータルサイト 

おわりに

助成金・補助金制度は、単なる「お金の支援」ではなく、企業の未来を形づくる「戦略的な投資機会」です。鋳造業においても、設備の近代化や脱炭素対応は避けて通れない課題です。

当社では、これらの制度に関する情報を日々収集・分析し、鋳造業界の皆様と「一緒に考える」姿勢で支援を行っております。制度の選定から申請書作成、導入後のフォローまで、幅広くご相談を承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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