アルミ鋳物の設計と指針について
鋳物の品質と経済性を満たすには設計と鋳造法の選定が重要です。
今回はそんな設計と鋳造法の選定について見ていきましょう。
アルミ鋳物の設計と指針
砂型鋳造法は1つの製品ごとに鋳型を造型する必要がある一方、金型鋳造法は鋳型の造型の必要がありません。一般的に、砂型鋳造法は少量の試作品に適しますが、金型鋳造法は量産品を鋳造することに適します。
鋳物の設計に際しては機能面(定められた機能を満たすこと)、製作面(製品に適した製造方法を確立すること)、外観面(使用目的により鋳造方法を定めること)といった基本的な要素を考慮する必要があります。
鋳造方法の選定に当たっては、寸法精度、最小肉厚、抜け勾配、鋳肌、縮み代、仕上げ代、形状設計といった仕様はもちろん、生産量および時間といった経済性の観点から決定する必要があります。
鋳造方案
鋳造方案には様々なものがあります。
それぞれにおいて、鋳込方法が異なるほかせき形状についても違いがあります。
・直ぜき
湯口を直接鋳物に結ぶ方法で、鋳れ込みは早いのですが溶湯は乱流となります。
・板ぜき
多量の溶湯を迅速に注湯するときに使用されます。
・段湯口
上注ぎと下注ぎを組み合わせた2段湯道です。3段のものや4段のものもあります。
・回しせき
溶湯を早く均一に注入するときに用いられます。
・車ぜき
回しぜきとどうようの効果を持ちます。
・雨ぜき
鋳型上部につけた受け口から細い多数の湯口を用いる方法です。見た目が雨のように見えます。薄肉鋳物や不純物の混入を避けるときに使います。
・上注ぎ
小物鋳物に用いらますが、溶湯が乱れやすく、大型だったり酸化物の生じやすい鋳物では使いません。
・下注ぎ
溶湯の入りが静かであるため、酸化物や不純物の巻き込みが少ないです。大型であったり複雑な形状をした鋳物、酸化物を生じやすい鋳物に使われます。
鋳造方案での注意事項
鋳物は鋳造の際に下型によってできる方が緻密であったり、鋳型内のガスは情報に抜けやすく下方には逃げにくいといった様々な特性をもっています。したがって、鋳物製作は次のようなことに注意されます。
・鋳物の仕上げ面および健全性の要求がある部位は下型にする
・仕上げ面は下面にする
・水平面は下型に置く
・ガス抜きは上向きにし鋳型の各部分の頂部には必ずつける
・溶湯は鋳型内で衝突することを避けて、静かにしかし素早く充填する
・溶湯が静かに最後まで勢いよく鋳型に充填されるように、湯口の高さ、湯道、湯溜りを整える
コンピュータシミュレーション
強度検討や熱変形の予測に使われる構造解析といったことをコンピュータを通してシミュレーションしていくことが可能となっています。
ここでは、凝固解析について見ていきたいと思います。
・凝固現象の基礎
凝固現象においては温度と濃度が重要になり、液相線や固相線で合金の平衡状態を見ていきます。二元合金の平衡凝固は比較的簡単に求められますが、多元合金の平衡凝固を求めることは難易度が高くなります。
実用的な合金のほとんどは多元合金であることや、類似した二元合金で計算を代用したりすることを考えると、ずれが生じることは少なくありません。しかし、最終凝固位置や凝固時間を大まかに把握することが可能であるため、有用性は高いです。
・凝固解析の方法
凝固現象の解析としては様々な解析式があります。
熱伝導方程式はその一つです。
熱伝導方程式で考慮しているのは、密度、比熱、温度、時間、熱伝導率、位置座標、凝固潜熱、固相率です。これは温度に着目した解析です。
他にも有限差分法、直接差分法、有限要素法、時間積分などがあり、非常に専門的な内容になります。
今回は設計と鋳造法の選定や解析について見てきました。特にコンピュータシミュレーションはかなり高度な数学や物理の知識を要する分野です。専用のソフトウェアで解析しているかと思われます。
参考文献
- 『軽合金鋳物・ダイカストの生産技術』(一般財団法人 素形材センター 2014年版)
アルミ鋳物・ダイカストに関する
課題を解決します
溶融品質
を上げたい製品歩留まり
を改善したい製品長寿命化
を図りたい自動化・省力化
を進めたい省エネ
を追求したい