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アルミ鋳物・ダイカストに関する技術コラムです

2020.02.17

よく使われるアルミニウム合金の特性とは?

自動車部品に使われることの多い「アルミ」。1999年のデータによると自動車用用途の生産量は鋳物でなんと90.9%、ダイカストで80.7%と著しく高い比率を示しております。実際、現場でも「アルミ」について一度も取り扱ったことのない、という方は少ないのではないでしょうか?
そんな人気者の「アルミ合金」について今回ご紹介していきます。

よく使われるアルミニウム合金の特性とは?

アルミにはいくつかの特徴があります。

  • 比重が鉄の約3分の1
  • 酸化皮膜により耐食性が良い
  • 加工性が高く整形しやすい
  • 陽極酸化処理など表面処理が容易にできる
  • 合金にすることによって優れた強度を発揮する
  • 低音でもろくならない
  • 電気や熱を通しやすい
  • 非磁性であるため電子機器に用いやすい
  • スクラップの再生が容易でリサイクル性に優れる
  • 以上の特性のほとんどが鋳物にしても失われることがない

このように「アルミ」は非常に便利な特性を持っているため至るところで使われているのです。
また、アルミ合金としてはケイ素を多く含む合金が実は多いのです。

  • 流動性の向上
  • 鋳造割れの防止
  • 引け性の改善
  • 耐摩耗性の向上
  • 熱膨張係数の低減
  • 少量のマグネシウムの添加で著しい析出強化が得られること
  • 微量のナトリウムなどの添加で靭性が向上する

このように数々の利点があることからケイ素を多く含む合金がよく使われます。そのような便利なアルミ合金はさぞ種類が豊富かと思いきや、JIS規格では金型重力鋳造用のアルミニウム合金としては8種17合金がしかありません。
何の製品のどの部品に使うかによって、どの合金を使うか見極めなければなりません。では8種のアルミ合金を見ていきましょう。

AC1A、AC1B

AC1AはAl-Cu、AC1BはAl-Cu-Mg系の熱処理型合金です。
強度が高く靭性に富み、耐熱性、切削性も優れます。特にAC1Bは常温でも高温でも最も機械的性質が高く、高圧送電線用架線金具や航空機部品、油圧部品などに用いられます。

ただし、鋳造時に割れや引けを発生しやすく鋳造性が良くないことや耐食性が悪く十分な防食対策が必要であるなどの欠点があります。そのため鋳物の形状によって溶解、鋳造法案に注意を要します。

AC2A、AC2B

Al-Cu-Si系の熱処理金型合金のAC2A、AC2Bは、強度向上のためマグネシウムを合金元素としてほんの少しだけ入った状態で使用されることが多いです。強度と鋳造性がともに良好であることからシリンダヘッドやシリンダブロックなどの自動車部品の多くに用いられます。

ただ伸びが低かったり耐食性があまり良くないといった弱点もあります。

AC3A

Al-Si二元系の非熱処理型合金で、ほとんど共晶組成のため、流動性と耐食性が良いです。そのためビルの外装パネルやエクステリアといった大型の建築関係の工作物、薄物砂型鋳物としてよく使われます。

しかし強度があまりないことに注意しなくてはなりません。

AC4A、AC4B、AC4C、AC4CH、AC4D

AC4A、AC4C、AC4CHはAl-Si-Mg系の熱処理型合金で、鋳造性、靭性、高圧性、耐食性が優れた合金です。特にAC4CHは添加元素量を調整してあるため、より高い靭性を誇っています。
そのため自動車の足回り部品等の高い安全性を要求される機械構造部品に使用されることが多いです。スクイズキャスティングなどの鋳造方法との組み合わせで鍛造品に迫るほどの信頼性の高い鋳物にすることもできます。

AC4BはAl-Si-Cu系の熱処理型合金で、AC2Bとほぼ同等の特性を持っています。AC4DはAl-Si-Cu-Mg系の熱処理型合金で靭性と高温での強度に優れます。この2つはエンジン部品に使われることが多いです。

AC5A

AC5AはAl-Cu-Ni-Mg系の熱処理型合金で、以前はその高い高温強度ゆえピストンやシリンダヘッドなどのエンジン部品に使われていました。
しかし熱膨張係数、耐摩耗性の優れるAl-Si系合金が普及した現在では、あまり使用される機会のない合金になります。

AC7A

AC7AはAl-Mg系の非熱処理型合金で、強度と靭性がよく、耐食性と陽極酸化処理性が最も優れていることから、船舶や食品機械部品に利用されます。ただ、鋳造性が悪いことが難点です。

AC9A、AC9B

他8種と同じ合金系ではありますが、ケイ素量を過共晶領域まで増やし、低膨張率と高耐摩耗性を追求した合金です。
鋳造性や靭性は低くなっています。2サイクル機関用ピストンに利用されています。

まとめ

以上がJIS規格に規定されているアルミ合金になります。鋳型の区分としては金型、砂型の合金になります。事務機器から航空機用部品まで幅広く使われているアルミ合金。今回はその特性についてご紹介いたしました。まだまだご紹介しきれていませんが、今回はここで筆をおかせていただきたいと思います。
次回は溶解と溶湯処理をご紹介します。

参考文献
『軽合金鋳物・ダイカストの生産技術』(一般財団法人 素形材センター 2014年版)

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