DX推進記#4:ペーパーレスとDX

当社ではDXに向けた取り組みを段階的に進めてきて、現在ではある程度その実現に成功しつつあります。数回にわたり当社のDXの推進記を紹介しております。
今回ご紹介するのは、ベトナムにある日系製造企業様と進めた「ペーパーレスとDX」の取り組みです。
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、グローバルに展開する現場にも波及しています。この企業様では、製造DX戦略の一環として、3か年計画での業務改革を掲げていました。初年度は、各工場部門の現状調査と、既存の紙・Excelベースで管理されていた記録データの分析に取り組みました。そして2年目となった今年度、いよいよ本格的なシステム導入に向けて動き出すタイミングとなったのです。
課題は「現場が動けるDX」
実際に検討を進める中で浮かび上がったのは、いくつかの重要な制約でした。
- データの多くが紙やExcelに散在しており、分析に手間がかかったり、データの漏れ抜けがある。
- クラウド利用が禁止されており、オンプレミス環境での運用が必須
- ベトナム語対応が求められる
- 社内の分析基盤とスムーズに連携したい
- 日本やIT部門への依存を避け、現地スタッフが自走できるシステムが理想
当初、外部のDXツール導入も検討されましたが、クラウド基盤であることや、現地語未対応、UIが複雑で現場が使いこなせないといった理由で導入を見送っていたようです。
解決策は「データ民主化プラットフォーム」
私たちはこの状況を踏まえ、工場の“データ民主化”を実現するプラットフォームサービスとして、新たなソリューションを提案しました。
“データ民主化“とは、組織内で誰もが必要なデータに自由にアクセスできるようにし、意思決定や業務改善に活用できる状態を指します。データが一部の専門家や特定の部門だけで管理されるのではなく、全社員や関係者が容易に利用できるようにすることが目指されています。
このソリューションは、製造現場における紙ベースの記録をすべて電子化し、帳票の一元管理やスマホ・タブレットからの入力を可能にします。
主な特長は以下のとおりです。
- 製造向け検査帳票の電子化と一元管理
- 帳票のマスタの一元管理
- スマホ・タブレットによるデータ入力およびバーコード読み取り
- オフライン対応で電波が届かない場所でも入力可能
- ベトナム語を含む多言語対応
- QC活動に基づいた簡易データ分析機能
- 社内AD認証との連携によるセキュアな運用
- スタッフ自身で帳票を作成・更新可能な柔軟性
現場が使える工夫と定着支援
特に重視したのは、現場スタッフが自立して運用できるようにすることです。現地の工場では、スマホやタブレットを使って、いつでもどこでもシステムにアクセスできるようにしました。これにより、デスクトップPCに縛られることなく、作業現場で即座に情報を確認し、入力できる環境を整えました。また、デジタルツールの利用に慣れていない現場スタッフのために、シンプルで直感的に操作できるインターフェースを実装しました。
また、製造業の現場では、必ずしもすべてのエリアでインターネットや社内Wi-Fiの電波が届くとは限りません。工場内の一部では電波が不安定で、オフライン環境での対応が求められる場面も多くありました。そこで、システムはオフラインでもデータ入力や閲覧が可能な機能を実装しました。たとえば、作業員がオフライン環境で生産記録を入力しても、スマホやタブレットにデータが一時保存され、電波の届くところでサーバーへデータが登録できる仕組みを導入しました。
さらに、言語対応もプロジェクトの要でした。海外工場の現地スタッフが自立して運用するためには、システムが彼らの母国語に対応することが必須でした。私たちは、システムに英語、日本語、そして現地の言語を切り替えられる機能を搭載し、誰もが自分の言語で業務を遂行できるようにしました。技術的な用語や操作手順が現地の言語で正確に表示されるため、現場スタッフもシステムに迅速に慣れ、日常業務にスムーズに取り入れることができました。
導入プロセスにおいては、「先に触って理解してもらう」ことを重視。初期段階ではデモサイトを用いてプロトタイピングを実施し、現地スタッフに実際の操作感を体験してもらいました。また、現地出張での導入支援や、リモート保守による継続的なフォローも行い、利用定着をサポート。現場が主体となって日々のデータ入力やフォームの編集を行えるようになり、「使えるDX」が確実に根付いていきました。
成果と広がる展望
こうした取り組みは、先方の社内でも評価され、年に一度の成果報告会やIT事例共有の場で発表されるまでになりました。ペーパーレス化とシステムによるデジタル記録の導入により、データの精度・速度の向上が見込まれます。さらに、現地スタッフ自身が運用・拡張できる体制が整ったことで、まさに「現場発のDX」がスタートしました。
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